鍵穴手術とは?

鍵穴手術は、キーホール手術(Keyhole surgery)と言われている手術方法です。手術のための頭皮切開や筋肉の切開に伴う出血や術後の痛み、手術侵襲による発熱などを考慮した『低侵襲手術』の事です。患者さんへの負担は少なく、術後の回復も早いのが特徴になります。


鍵穴手術の特徴

「鍵穴手術」という手術法はここ最近は流行になっていますが、残念ながら小さい切開で手術を行うだけで手術時間を長くしたり、無理をしてしまう様なことがあるようです。「鍵穴手術」は、脳外科の世界的権威である福島孝徳先生の代名詞として日々改良が加えられ、現在に至っております。私は、福島先生とその改良に加わったスタッフです。脳外科医同士で話をしても手術を見ても、鍵穴手術のコンセプトが十分理解されていなかったり、方法が異なる事も多々感じます。なのであえて「福島式鍵穴手術」という言葉を用いる場合もあります。

1)切開部が小さい

脳外科の手術は、頭部を切開するために大きな切開は、頭皮の下に重なる筋肉も大きく切開を加えたり、頭蓋骨より剥離する事になります。これらによる術後に切開部の痛みだけではなく、周囲の筋肉(首や肩)もコリが認められる事もあります。この侵襲を最小限にするために切開を1円玉程度に小さくしています。

2)無剃毛

約15年位前までは、脳外科の手術時には髪の毛を全部剃り落とす事は男女問わずに行われていました。私は、25年前から部分剃毛(切開部上下を約5ミリ程度剃毛する)で行い、20年前から完全な無悌毛で手術を行なって行なっています。学問的には剃毛した場合と無悌毛での手術に関する術後の感染の違いについて形成外科領域(美容外科)で散見され、感染知識と管理をきちんと行う事で感染なく手術を行なっています。

3)バランスの良い手術

無悌毛で切開部が小さければ、侵襲の最小限となります。しかし、小さい術野で大切な脳を扱う手術をする場合には脳外科手術用の顕微鏡を用いて、繊細で特殊な手術器機を細かい操作する技術が必要となります。また、小さい術野でも全ての頭蓋内の構造が透けて見えて手術を行える様な解剖の知識も必要になります。また、知識だけではなく経験が最終的には必要です。その経験を我流で得ているのか?熟練した脳外科医の指導による経験なのか?は大きく異ります。手術は、安全性が何より大切になりますので切開部が小さくても手術自体が難しく行われていたり、時間がかかるような手術にならないような修練と過程が必要です。かといって、切開部が大きくては美容的とは言えません。解剖学的知識ときちんと指導された手術経験と日々の積み重ねにより、低侵襲での手術と美容的なバランスが良い手術といえるでしょう。

 

4)患者さんへの負担が少ない

頭髪は剃らないので、術後は手術した事が周囲の人にわかりません。退院直後に外を歩いても、復職した職場でも頭部の切開痕は見えませんので気にする必要がなく、気遣う必要はありません。切開部の痛みも、鎮痛剤に内服は必要ないくらいまで自覚する事はないため、身体的な負担が大きくありません。

5)臨機応変にできる手術

切開部を小さくする試みの中で、安全にバランスの良い手術を行うための手術器機の大きさや長さより1.5cmが限界と考えています。しかし、頭蓋骨の形状や首の筋肉の発達(厚み)により深さや術野の見え方に個人差があり、病変部が予想した状態ではない場合もあります。無理をして切開部を小さくしすぎて手術を困難にしたり時間がかかる様な手術になってしまうと、我々の行なっている「鍵穴手術」とは言えません。切開部の位置をかえたり、大きさをかえる必要性が判断できる素地があって、我々の行なっている「鍵穴手術」と言えるでしょう。

 


鍵穴手術の歴史

世界の注目を集めた手術法

福島孝徳先生が行なった手術は、削除した頭蓋骨の下にある硬膜に25セント(米国硬貨)程度の切開を行い手術顕微鏡を用いる手術でした。患者さんの身体の負担を考え、福島孝徳先生1980年代に開発を初め、確立させたものです。この手術法は、この世界から注目を浴び「鍵穴手術」と命名され福島孝徳という脳外科医が世界中に知られる事となり、世界から絶大な支持を受けることになりました。

 

流行となった鍵穴手術

最近では、インターネット等で「鍵穴手術」を標榜する医療機関や脳外科医も少なくありません。本来の「鍵穴手術」は、福島孝徳先生のもとで解剖を学びトレーニングを積み、正しい脳のかいぼう 知識と練達した幅広い臨床スキルを持つ人だけができる手術法です。

鍵穴手術の誤解

「切開部や術野が小さい事だけを優先させている手術」と誤解されている医療関係者や脳外科医がおられます。昔は、特に多かったと思います。切開部等を小さくしただけの手術は患者さんへのリスクを高めるだけであり、必要最小限・低侵襲の手術という我々の「鍵穴手術」のコンセプトとは大きく異なります。その様な誤解された手術は、患者さんに重大な合併症を引き起こす可能性があります。

福島孝徳先生のつぶやき

『治療(手術)に必要な範囲が見えていればいいのに、無駄に切開が大きい。そんな手術に限って手術が上手くできていないんだよ。』と昔はよく言われていました。『頭の中の解剖や手術過程のシュミレーションが十分にできないから切開を大きくして術野を広くして確認しようとするんだよ。』と解剖の知識と経験を重要視されていました。『繊細な脳外科手術器機を操作できないし、熟知した上手な操作がきないとさらに大きくなるんだよ』と、よくつぶやかれていたのを記憶しています。


鍵穴手術の執刀例

● 切開部が目立たない

脳外科手術;無悌毛
創部が小さく髪を剃らないので、切開部がわかりません。

手術後の写真です。左耳の後ろを手術のため切開をしています。写真のように周囲の人には、手術をした切開部はわかりません。拡大をした右の画像で縫合用のホッチキスが見えます(退院前に取ります)。退院後の生活で手術を受けたことがわかりませんので、周囲を気にする必要は全くありません。

● 切開部が小さい

脳外科手術;創部が全くわからない。

● 無剃毛はとても大切

 

 

私は、この「鍵穴手術」に髪の毛を切ったり、剃らないで皮膚切開を行う、「無剃毛手術」を19年前より行っています。私自身、過去20年で1500例以上の実績があります。剃毛もしくは散髪による術後の精神的負担の軽減だけではなく、個人情報の保護にもつながります(傷が髪の毛に隠れているので、手術を受けた事が周囲には気付かれません)。感染は、免疫機能低下症、膠原病高などの特殊疾患に対してステロイドの長期内服、頭皮の皮膚疾患等の身体状態があれば感染のリスクになりますが、稀です。

● 鍵穴手術の新聞記事

脳外科医 福島孝徳と新聞記事なった脳外科医 根本暁央(日刊ゲンダイ)

● 鍵穴手術の手術後の切開部と開頭部の3次元CT画像

鍵穴手術の術後の3D画像(CT)

術後の手術切開部

【 他施設で行われた手術切開部と傷痕 】

一般的な病院での皮膚切開と術後の傷痕です。

脳外科手術の手術切開部は、一般的に大きい
手術をした切開部が残ってしまうと目立ってしまう事で個人のプライベートが守れない事もあります

他院で手術が行われた患者さんの皮膚切開部痕です。耳の後ろから首筋まで長い皮膚切開痕が比較的多いです。再発による再手術を行う必要はあり、私が執刀しましたが切開した範囲は、1/3程度の切開で行なっています。


一般的な脳外科での手術切開部の画像

いまでも部分剃毛されている患者さんがおられます(退院後に、後ろに立たれると切開部位がわかり手術を受けた事が周囲に知られてしまします)。切開部が、大きいのも仕方が無いのかもしれません。これだけ切開部が大きいと、その下にある重なって走行している筋肉の切開して縫合するので、肩こりや頭痛を術後に認める患者さんは多いのではないかと考えられます。


根本執刀例;鍵穴手術と小さな皮膚切開部

脳外科 根本暁央;手術切開部が小さいので目立たない
手術をした切開部小さくする事で目立つ事なく個人のプライベートが守れます。

私が執刀した鍵穴手術の切開部です。退院1ヶ月後の写真です。切開部は、ほとんどわからず日々目立たなくなり、多くは美容室に行ってもわからなくなります。我々の行なってきた従来の「鍵穴手術」はこの程度の切開で行われています。

脳外科 根本暁央 鍵穴手術後の創部(きれい)
         術後創部(切開部)の治り方には個人差がありますが、第三者が見てもわかりません。

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