髄膜腫

(ずいまくしゅ)


● 髄膜腫の再発とは?


腫瘍の全摘出をしても、長期経過観察で再発する(腫瘍が再出現する)場合があります。初回発生した部位付近に再発する事が多いです。また、全摘出できずに残存した腫瘍が、経過で再増大する(少しずつ大きくなる)場合があります。これらを、一緒に「再発」と説明される事があるかと思われますが、正しくは「再増大」です。

髄膜腫の再発とは?

● 髄膜腫の再発について


髄膜腫は、様々な部位や大きさで発生します。世界中の脳外科医が、この髄膜腫に関する報告をしていますが手術中の評価(絶対に全摘出と言えるか?、腫瘍周囲の処置の程度)は異なる事があります。また、病理診断は腫瘍の一部をとって顕微鏡で診断します。腫瘍を細かく切って顕微鏡で全てを見る事ができませんので、ここでも腫瘍を必ずしも正確に捉えているとは言えません、それにより、報告中の数字にはかなりばらつきが生じますので、それも念頭に入れて下さい。

 

髄膜腫の再発までの期間は、全体平均で手術後より約5-6年と言われています。よって、手術してから5年間隔で、報告されているものでばらつきのない範囲で下にまとめます。

 

【 再発率 】

髄膜腫の手術後の再発(再増大)は、手術による摘出率と関係します。これは、常識的に考えても当然と言えます。手術をしてから、5経過で見ると全摘出された場合の再発10-30%程度の報告とされています。全摘出されていなかったから再増大すると言うわけではなく、30%に変化がなかったとされています。

【 全摘出と亜全摘(腫瘍が残存)による再発(再増大)の違い 】

術後5年後の報告では約2倍ー3倍、術後10年後では約2−2.5倍の違いがあります。当然、全摘出した方が少ないと言えます。例えば、全摘出をした患者さん10人と亜全摘した患者さんが10人いたと仮定すると、5年後に1-2人が再発をして2-3人が再増大している事になります。さらに、10年後では2人が再発をして、4-5人が再増大している事に近いと思われます。

 Simpson(シンプソン)分類 】

手術による摘出範囲と処置後の再発との関係を示すための一般に用いられる分類です。摘出度を5段階で表し、術後5~20年経過した時点での再発率を示したものです。

・SympsonG-1: 腫瘍の付着硬膜・周囲の異常骨を含めて肉眼的全部摘出 → 再発頻度 9%

・SympsonG-2: 腫瘍の肉眼的全摘出、硬膜浸潤部の残存に電気凝固・焼灼処置をしたもの → 再発頻度 16%

・SympsonG-3: 腫瘍の肉眼的全摘出のみ、硬膜の電気凝固・焼灼していないもの → 再発頻度 29%

・SympsonG-4: 腫瘍の部分摘出のみ → 再発頻度 39%

・SympsonG-5: 腫瘍の生検(診断のため一部の摘出)、減圧術のみ → 再発頻度 89%

1957年の報告されたものなので、現在とは状況が異なります。電気凝固・焼灼する方法や器機なども大きく変わってきています。摘出のみで終わる事もかなり少ないと思われます。最近の報告では、Sympson G-1とG-2は術後5年、10年で大きな差は無いと考えられます(1-2%程度の再発率)。

 髄膜腫の発生した部位のより違い 

腫瘍が摘出しにくい部位は、腫瘍が全摘出できずに腫瘍を残しますので再発の可能性が高くなります。腫瘍が見にくい部分(後頭蓋窩を含む頭蓋底部の髄膜腫)、血管や脳神経と癒着している・腫瘍の中を走行している、などが挙げられます。

 

注意)この部分を無理して摘出すると、脳梗塞や脳神経麻痺などの症状が出現してしまいます。全摘出を目的とした事による合併症もあれば(腫瘍を残す事で合併症の回避できた)、細心の注意を払っていても起きてしまう事があります。執刀医師や患者さま・御家族が再発の心配ばかりをして、合併症を招かない様にする事も大切です。


術後の再発の予測


髄膜腫の病理診断の重要性をわかりやすく解説
腫瘍の再発における病理検査にでの評価

再発しやすい因子


 全摘出できなかった症例

 若年者(<40歳)

 摘出腫瘍の検査(病理検査)での腫瘍細胞の核分裂像(MiB-I陽生率:34%以上

 

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全摘出されても、再発の報告例もありますので長期観察が必要になります。

 

        【 全摘出されても再発する可能性のある因子

 

 脳への浸潤が認められた場合

 摘出腫瘍の検査(病理検査)にて高い核分裂指数を示す

 摘出腫瘍の検査(病理検査)にて高い腫瘍細胞密度が認められる

 

全摘出されても、再発の報告例もありますので長期観察が必要になります。


再発の頻度


腫瘍摘出の程度に影響されます。良性髄膜腫(WHO グレード-1)で完全摘出であれば、治癒が見込まれます(少数で数年後再発することがあります)。組織学的なグレード分類が再発を予測する良い指標となります。再発率は、

 

    WHO グレード-1 (良性髄膜腫)        :   7-25%

WHO グレード-2 (異型性髄膜腫)    : 29-52%

WHO グレード-3 (退形成性髄膜腫) : 50-94%

WHO Classification of Tumours of the Central Nervous System 3rd edition, 2007より引用)

 

WHO グレード-2やWHOグレード-3は、臨床的には増殖が速く、摘出後短期間に再発する傾向があります。WHOグレード-3は、遠隔転移する事も稀ですが、認められる事があります。

 


再発については、手術所見・術中処置、摘出率、病理検査結果(細胞密度やWHO グレード)などの結果を執刀医より説明を受けて下さい。個々の症例により、手術内容や術中評価、臨床経過は異なります。上述した内容以上に多くの情報をまとめて判断する必要があります。局所再発と言いますが、初回の発生部位再発する事が多いですが、全く違う部位に再発する事もあります。また、再発(再増大)により再手術を行った結果、WHO グレードが前回よりも悪くなっている事もあります。に繰り返しますが、術後は必ず定期的な画像検査は必要です。

 


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