髄膜腫(分類を詳しく)


1. 髄膜腫の分類


髄膜腫の分類の基本を説明

髄膜腫の分類は、症状の有無や組織的亜型(15種類)、組織的異型性の程度(良性/中間悪性/悪性)、手術所見による分類があります。

臨床では、組織的亜型と組織学的異型性が重要になります。WHO(世界保健機関)による分類での15種類と組織学的異型性を一緒にみると、良性髄膜腫(WHOグレードⅠ)は80〜90%であり、9種類の組織学的亜型が含まれます。中間悪性髄膜腫(WHOグレードⅡ )は、約15%であり、3種類の組織学的亜型が含まれます。悪性髄膜腫(WHOグレードⅢ) は、1〜3%で3種類の組織学的亜型)が含まれます。髄膜腫が、組織学的に脳へ浸潤している事が、WHO(世界保健機関)グレードⅡと診断するためのここ最近の重要な診断基準になっています。

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1) 髄膜腫の発生部位

髄膜腫の発生部位を細かく表記、頻度も簡単に表記

2)髄膜腫の組織学的亜型と異型性

髄膜腫の組織学的亜型と異型性と頻度

3) 病理診断

病理医の診断時写真

 

 

顕微鏡で観察した細胞の様子や構造を組織と言います。病気によって組織がどの様に変わっているかを顕微鏡による特徴を調べて、病気を理解する学問を病理学と言います。この学問に関わる医師が病理医です。「Doctor of Docters」と呼ばれており、直接患者さんに会うことがありませんが、医療現場においては治療を選択するためには欠かせない、確定診断を行います。医療現場では、欠かせない存在が病理医師です。


 

 

病理医により髄膜腫とその組織学的亜型や組織学的異型性の確定診断がされます。脳神経外科医が、手術時に観察した手術時所見と合わせて総合的に評価します。摘出した腫瘍を薄く切って基本的な染色をしたり特殊な染色を行い腫瘍細胞の特徴を顕微鏡で観察をして、確定診断を行います。

10つの髄膜腫の組織学的亜型のプレパラート写真

病理診断をするには、摘出した病変や採取したものを顕微鏡で観察できるように特殊な染色液で染めるなどさまざまな工程や処理が必要となる熟練を要する作業を行います。よって診断する前の過程と診断時に追加処理を必要とする場合もあるので、病理医が病院に常勤している場合とそうでない場合(外部施設に委託)とでは診断までの時間が異なります。また、病理医が病院に常勤していると脳外科医と連携を取る事で診断がより正確であったり迅速に行えます(森山記念病院には、熟練した優秀な病理医師が常勤しています)。


2.髄膜腫の分類と遺伝子異常

近年の次世代シーケンサーにより、多量にシーケンスをして髄膜種の遺伝子に関わる情報の収集が短時間で広く行える様になりました。30年位前は、髄膜腫の約60%に染色体22番長腕の完全もしくは部分欠損が認められる事が報告されていました(NF2遺伝子)。最近では、NF2,TRAF7,KLF4,AKI1,SMO,SAMARCE1,TERT, CDKN2A/B,BAP1などの遺伝子が挙げられており、髄膜腫の発生部位や組織学的亜型(WHO分類)との関連や傾向が少しずつ明らかになってきています。例えば、髄膜腫の約60%に認められるNF2遺伝子の変異による遺伝子異常では、線維性髄膜腫、移行性性髄膜腫、砂粒腫性髄膜腫が多く認められると報告されています。髄膜腫の治療予後や治療後の再発、放射線治療に対する効果に加え、新たな分類に重要な役割を持つ事が今後、期待されています。


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