脳室内腫瘍

脳脊髄液で満たされた脳室内に一次的に発生する腫瘍です。さらに、脳室の外から脳室内に浸潤した腫瘍も含み脳室内腫瘍と呼びます。脳腫瘍全体の約10%の頻度で認められ、良性腫瘍から悪性腫瘍まで認められます。多発する事は稀です。年齢や腫瘍が発生する脳室の場所により、好発する腫瘍が異なります。腫瘍の種類や疾患名は画像診断だけでは比較的難しいため、最終的には病理診断により確定してから術後の方針を決めます。


1)脳室とは?

脳の中にある髄液という透明な水を産生し貯めている場所です。立体的に複雑な形をしています。

脳室の立体的で複雑な構造をわかりやすくまとめたイラスト

立体的に複雑な構造をしている脳室は、

 

① (右)側脳室

② (左)側脳室

③  第3脳室

④  第4脳室

 

の4箇所に分けられています。

複雑な脳室の構造と名称


2)脳脊髄液(髄液)

脳脊髄液(髄液)は、脳室の脈絡叢から産生される透明な水です。1日に約500ml(成人)産生されると言われています。脳室は500mlの髄液が貯まるスペースはありませんので、脳脊髄液は脳室から脳周囲に流れています。流れている色々な部位から吸収されて血液(静脈系)に戻ります。脳室を通過して脳周囲を循環するといった産生と吸収を繰り返しています。役割は不明ですが、脳の保護や脳内の神経細胞の老廃物の排泄等に関わっているとされています、


3)脳室内腫瘍の種類

小児と成人に発生する腫瘍の種類は異なります。さらに、腫瘍が発生した脳室の場所によってもそれぞれ好発する腫瘍が異なります。

脳室内腫瘍の種類

脳室内腫瘍の種類.

① 脳室内腫瘍の発生部位

(右)側脳室・(左)側脳室・第3脳室・第4脳室

② 脳室内腫瘍の症状

脳室内腫瘍が増大する事で、脳室内に産生された脳脊髄液(髄液)の流れが障害されるため頭蓋内亢進症状が認められる(頭痛、吐き気、嘔吐、視力障害)。


側脳室内にできる脳室内腫瘍の症状や腫瘍の種類を年齢別に説明
第4脳室内にできる脳室内腫瘍の症状や腫瘍の種類を年齢別に説明

臨床では、髄膜腫・中枢性神経細胞腫(Central neurocytoma)、コロイド嚢胞などを診る機会が多いです。症状は、脳室内の髄液の流れに障害が生じて水頭症や頭蓋内圧亢進症状が認められます。比較的ゆっくり生じる場合では、脳の代償機能が働くために、臨床症状は軽度である事が多いです。

 

治療は、手術による確定診断(病理診断)を行った後に、必要であれば追加治療(放射線治療や化学療法)を行う場合があります。手術方法(頭の切開部位やアプローチ)は、発生部位により異なります。脳室は、脳内にある場所なので一部脳を切開して摘出を行います。よって、機能的に問題の無い部位から脳室へ進入して腫瘍の摘出を行います。