髄膜腫(分類と診断)

髄膜腫は、その発生部位に基づいたす腫瘍の位置で分類します。 髄膜腫の位置は、必要に応じて手術の計画を立てるなど主治医が治療を決定するのに役立ちます。 髄膜腫は、外科的に安全に除去することが困難な領域にある場合があります。 これらの場合、代替の治療オプションが追加される事があります。

わかりやすい髄膜腫と脳の関係を示したイラストです。
髄膜(硬膜)より発生した巨大髄膜腫

1. 髄膜腫の分類

(1)部位による分類

(ⅰ)頭蓋冠髄膜腫

(ⅱ)頭蓋底髄膜腫に分けられます。

 

頭蓋冠とは、頭蓋骨の中で頭蓋上部を蓋(ふた)のような形状で構成される場所です。頭蓋底は、その頭蓋冠より下の床のような場所です

(ⅰ)頭蓋冠髄膜腫

   ①大脳円蓋部 ②傍矢状洞 ③大脳鎌

 

 

①大脳円蓋部髄膜腫:これらの髄膜腫は、脳の上部に沿って成長します.

②傍矢状髄膜腫:左右の脳は髄膜からなる仕切り(大脳鎌)によって左右に分かれています。 傍矢状髄膜腫は、脳の両側の間のこの仕切り部分で成長します。

③大脳鎌髄膜腫;左右の脳は髄膜からなる仕切り(大脳鎌)から発生した部分で成長します。


 (ⅱ)頭蓋底部髄膜腫

   ①前頭蓋窩(臭溝、鞍結節部)

   ②中頭蓋窩(蝶形骨縁、海綿静脈洞)

   ③後頭蓋窩(小脳円蓋部、小脳橋角部、テント

         斜台、大後頭孔)

 

①嗅覚溝: 嗅覚に関わる神経走行する部位です前頭蓋窩の中心にあります。 これらの髄膜腫は、臭いの神経が脳に接続する場所す。 その結果、患者は嗅覚の喪失を経験する可能性があります。 これらの腫瘍は、前頭葉の底部に近接しているため、人格に影響を与える可能性があり、巨大なサイズに達する可能性があります。

 

①鞍結節部髄膜腫:これらの髄膜腫は、脳の前部近く、目のすぐ後ろと鼻根部後方に位置しています。 この腫瘍は視神経が脳と繋がっている場所の近くにあるため、時に視力の変化を経験する場合があります.

 

②蝶形骨骨縁髄膜腫:これらの髄膜腫は、中頭蓋窩の脳の基部もしくは底部近くの内側に成長します. 

 


③小脳円蓋部髄膜腫:これらの髄膜腫は、通常、小脳周囲の後頭骨内側に位置しています。 この領域に髄膜腫がある人は、バランスの害、めまい、吐き気を経験することがあります。 これは、髄膜腫がバランスを制御する脳の一部である小脳に圧力をかける可能性があるためです。

③斜台髄膜腫: これらの髄膜腫は、脳の下部または頭蓋底に沿って、脳が体の他の部分の情報をやりとるする場所である脳幹の近くの頭蓋骨内面から成長します。

③大後頭孔髄膜腫:大後頭孔は頭蓋骨の底にある穴(孔)で、脳が脊髄を介して体の残りの部分に接続でする部位より成長します。

髄膜腫のMRI画像と剖検による髄膜種の画像との比較で、治療が難しい部位がわかります。
重要な構造物や手術が難しい部位に生じた髄膜腫

(2)組織学的亜型による分類

摘出した腫瘍を主に顕微鏡で詳しく見る事により、最終的に診断(確定診断)をします。顕微鏡の観察では、腫瘍細胞の形と構造や構築がさまざまです。このため、髄膜腫では顕微鏡で観察をした形態学的な特徴よりWHO(世界保健機関)で分類されている15種類のサブタイプ(組織学的亜型)を用いています。

(3)組織学的異型性の程度による分類

「異型度」とは、正常な細胞や組織との違いの程度を表します。細胞内の核の大きさが均一であれば、正常な細胞に近いと判断し、形や大きさにバラツキがあるほど異常な細胞とみなします。また、摘出した腫瘍細胞内に「核分裂像」が多く見られるほど腫瘍細胞が盛んに増殖していると考えられます(悪性度が増します)。WHO(世界保健機関)により、髄膜腫の悪性度により3段階のグレードに分けられています。多くの髄膜腫は、グレードⅠの良性に属します。中間型悪性度を示すグレードⅡの中間型悪性髄膜腫は約15%位に認められます。悪性髄膜腫と言われるグレードⅢは、約1〜3%に認められます。WHO(世界保健機関)の分類は、脳腫瘍の予後を反映するように分類され、良好に反映されたものです。良性は、女性に2〜3倍多く認めらますが、悪性度が増すに従って男性の割合が増えます。

(4)手術所見による分類

脳外科手術用の顕微鏡を用いて手術を行い、それによる脳と腫瘍の境界の所見より3つの型に分類をします。

)平滑(Smooth type);腫瘍と脳の表面(くも膜)との境界がはっきりしているため、腫瘍境界を剥離し易いため摘出し易い。

ⅱ)移行型(Transitional type):腫瘍の脳の表面(くも膜)との癒着が強かったり、ときに破壊されている。腫瘍と脳との間に脳の血管が巻き込まれている。腫瘍境界が、剥離しやすい部分と難しい部分が混在する事が多い。

ⅲ)浸潤型(Invasive type);腫瘍と脳の表面(くも膜)が極端に強い癒着や破綻されている事によって脳の表面が腫瘍によって破壊されているため、脳のダメージを最小限にして摘出する必要があります。


2. 髄膜腫の診断

 髄膜腫は、CT検査もしくはMRI検査にて診断されます。CT検査では、腫瘍が小さい髄膜腫の診断が難しいため、MRI検査が診断に適した検査です。腫瘍が疑われた場合は、造影剤を用いた検査を行って、造影剤に染まった腫瘍の部位や造影所見にて髄膜腫の診断をします。

脳を包む膜を髄膜と呼びます脳についた状態で2枚(軟膜・くも膜)、脳についていない状態で脳の外側(=頭蓋骨の内側)に1枚(硬膜)ありますので,頭を輪切りにした画像検査(CT,MRI)では脳と頭蓋骨の間に認められるのが画像での特徴で一般的です。

開頭手術のイラスト;髄膜腫の発生する髄膜をわかりやすく說明します。
髄膜の位置(硬膜・くも膜・軟膜) ;  頭蓋骨→硬膜→くも膜→軟膜→脳

脳を包む膜を髄膜と呼びます。脳についた状態で2枚(軟膜・くも膜)脳についていない状態で脳の外側(=頭蓋骨の内側)に1枚(硬膜)ありますので,頭を輪切りにした画像検査(CT,MRI)では脳と頭蓋骨の間に認められるのが画像での特徴で一般的です。

いろいろな場所にできる髄膜腫をわかりやすく理解するためのMRI、CT画像をお見せします。
       頭蓋骨の内側(髄膜)にできるため、CT・MRI画像では骨の内側に認められる事が多い

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