(ずいまくしゅ)
腫瘍の上にある頭蓋骨の一部を取り除き、硬膜を露出させます。腫瘍周囲の硬膜に切開を加えて腫瘍を確認します。
腫瘍の上にある頭蓋骨の一部を取り除き、硬膜を露出させます。
腫瘍周囲の硬膜に切開を加えて腫瘍の存在を確認します(点線/矢印)。
硬膜と腫瘍の付着部は、血管の発達が良いために止血(電気凝固)しながら腫瘍を露出させます(点線の黒い部分)。この腫瘍は、腫瘍が赤色調で腫瘍内に流れている血液が比較的多いことが予想されます。
しかし、同じ髄膜腫でも腫瘍が黄色〜白色調で腫瘍内の血行が比較的少ない事が予想されるものもあります。青い矢印は、脳表のくも膜と腫瘍の境界部です。⬆️の写真では、くも膜が白濁し正常のくも膜と癒着した連続性のある所見として認められます。⬇️の写真では、明らかに正常くも膜と腫瘍の境界がはっきりしています。⬇️の写真で青い点線内に光を反射している膜がくも膜です。頭部MRI検査では、腫瘍は造影剤に染まり白い塊として認められます。よって、腫瘍の場所や大きさを知ることができます。しかし、腫瘍の状態(腫瘍を栄養している血管の発達、腫瘍の硬さの程度)や周囲との関係(脳や血管との癒着の状態や程度)については、精密検査機器のMRIでもわかりません。手術中に知りうる情報になります。
患者さんやご家族が心配される手術によるリスクは、手術中にわかる所見で大きく変わることがあります。腫瘍が周囲構造物(脳や血管、部位によっては脳神経)と癒着していれば、摘出操作による血管損傷で脳出血や脳梗塞、くも膜や軟膜のダメージで脳損傷となる可能性があります。手術は、術者の眼を用いた脳、腫瘍、境界部に対する認識と判断が安全な手術を行うには不可欠です。腫瘍血管が発達している場合は、摘出のたびに腫瘍からの血液が滲み出し(もしくは、流れ出し)、正常な構造物との境界が確認しずらくなる事もリスクになってきます。私自身は、髄膜腫の手術(病院施設の症例数ではなく、個人執刀症例数)は、300例以上を経験しており、良好な結果を得ています。大学病院の中には、施設での年間髄膜腫症例数が10例位の施設もありますので、脳外科医個人の経験数としては、かなりの症例数になります。手術の進行と同時に術野所見に対する評価や判断、手術戦略とリスク管理のバランスが必要とされる手術の中では、特に留意すべき腫瘍の一つであると私は考えています。熟練した世界的脳外科医である福島孝徳先生より解剖だけではなく発生部位ごとの手術法のポイントをもご教授も頂き、また多くの症例を一緒にさせて頂いた事が私の脳外科医としての財産であり、技術だけではなく術中の大切な判断に対する頑丈な基盤となっています。
髄膜腫の主な治療方法は、外科的手術(腫瘍摘出術)です。基本的には、外科的な腫瘍摘出を勧めています(組織診断も行えます)。摘出難度や合併症のリスクは、発生した部位や大きさ、脳への浸潤等によって異なります。治療が必要と決めるのは、手術適応(症状の有無や腫瘍の大きさの経時的変化の有無など)や自分の希望や心配する事などを脳腫瘍の治療経験の多い脳外科医に相談してからでも遅くはありません。