外来にて顔面痙攣の出現の時期や経過をお聞きします。また、画像検査を行い顔面神経の走行を確認したり顔面痙攣の原因となっている腫瘍の有無、顔面の運動に関わる脳疾患(脳梗塞や感染症)の有無を評価した上で顔面痙攣の診断をします。
症状が出現してから増悪していくまでの経過と期間を確認します。ついで、頭部MRI検査を行い、顔面神経の走行と顔面神経根部を圧迫している血管や腫瘍等がないかを診断します。細い血管が、顔面神経を圧迫している場合は明らかな画像所見として説明できない場合もあります。その時には、症状や経過も含め総合的に診断を行います。また、神経走行がわかる特殊な頭部MRI検査(撮影法)がされていない場合は、診断できません。
眼の周囲が小さく波を打つような動きは、健常者でも認められる事があります。これは、眼性ミオキアと言って眼精疲労や体調の疲れから出てくるもので片側性顔面痙攣とは異なります。また、過去に顔面の筋肉が動きにくくなる様な疾患の既往のある場合は(末梢性顔面神経麻痺、外傷、脳腫瘍などの手術後)、治癒後の経過で二次性の顔面痙攣が出現しますが、血管の圧迫によるものではないため手術では治りません。
二次性の顔面痙攣とは、ダメージを受けた事により顔面麻痺が出現した経過が必ずあります。構造的な神経の回復が、不十分であるために顔面痙攣が認められます。「病的共同運動」と呼ばれるものです。口を動かすと目が閉じる,食事の時に噛むたびに目が閉じる、まばたきすると口が引っ張られるというような症状です。手術では、治る事はありません。
脳から左右1本ずつ顔面神経が出る。
➡頭蓋骨のトンネル中を走行して顔の表面へ向かう。
➡骨のトンネルを抜けて、耳の下から出る。顔面を走行(緑矢印)。
その後に細かく枝分かれをして(赤矢印)、顔面にある幾つかの顔面を動かす筋肉に脳からの指令を伝える。
頭部MRI検査にて頭蓋骨内の顔面神経の走行を確認する事ができます。この画像情報と臨床的な経過や症状から診断します。
(写真上)
頭の水平断面MRI画像です。顔面神経は、聴神経(耳で聞いた音を脳へ伝える神経)と併走しています。これらの神経は、2本線として認めらています。
(写真下)
問題となる場所は、脳から 顔面神経(点線↑) が出た部位神経根部(*)です。拍動する血管(動脈)が,顔面神経根部(*)を圧迫する事が主な原因になります。稀に脳腫瘍が顔面神経を圧迫する事により痙攣(けいれん)を誘発させていることもあります。脳の表面や頭蓋骨内側に存在するクモ膜や拍動しない血管(静脈)が原因となる事もあります。血管や腫瘍などの圧迫により刺激を受けると顔面の筋緊張が高まり(顔がこわばる、眼が開きにくいなどの症状)、顔面の痙攣(けいれん)を誘発させるようになります。
また、脳の表面や頭蓋骨内側に存在するクモ膜による神経への影響により痙攣(けいれん)が認められる事もあります。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
顔面神経の下を走行している神経は聴神経(耳から聞いた音を脳に伝える神経)です。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
一般的に多く認められる画像所見です。聴神経(▲)の上を走行している顔面神経(▲)が認められます。蛇行した血管(動脈/↑)が、顔面神経の根元(▲)に当たっており圧迫している所見が認められます(点線○)。
顔面神経と聴神経との間を走行していた血管(動脈)が、次第に走行を変えていき弓の様な変形をしてしまっている顔面神経(↑)が認められます。これにより、神経根部への血管の走行が認められたり(▲)、顔面神経牽引(点線○)による刺激にて顔面の痙攣が発生します。
顔面神経の近くを走行していた太い血管(動脈:↑)が、次第に走行を変えて顔面神経の近くに寄っていく事が原因になります。この太い血管より枝分かれした血管(点線○)が、顔面神経の根元(▲)に当たっているのがわかります。この接触もしくは圧迫によって顔面の痙攣が発生します。顔面神経の下を走行しているのは、聴神経です。