いろいろな呼び名がありますが、嚢胞変性を呈するため「類表皮嚢胞(Epidermoid cysyt)と言うのが一般的です。腫瘍ではなく良性の非腫瘍性病変ですが、腫瘍として扱われる事が多いです。35歳から59歳に好発し40歳代に多く、脳腫瘍と一緒に統計をとると約1%の稀な疾患です。やや女性に多い傾向にあります。
一般的には、類表皮嚢胞(Epidermoid cyyst)と呼ばれます。
胎生期(受精卵から出産までの間)に遺残組織から発生する非腫瘍性の嚢胞性病変です。出産までに退化もしくは消失する組織の一部が、本来発育すべき部位以外の部位に存在した組織が、出産までに退化もしくは消失せずに存在した事により発生します。
母親の胎内で、いろいろな細胞が集まり発達して器官(臓器)となった後に、なくなるはずの細胞の集まりが、時々残ってしまう事があります。それを胎生期遺残組織といいます。患者さんが、御母上のお腹の中で命を授かってから体が形成させるまでの過程で原因が生じています。表皮(毛などの皮膚附属器は含まない)に由来するこれから発生する非腫瘍性嚢胞性病変です(腫瘍類似病変)。
原発性脳腫瘍としては、約1.3%とかなり稀。
薄い膜(扁平上皮)で嚢胞を形成しています。嚢胞の中は、脱落変性した角化層の残屑(おから様)で皮膚・髪・爪かどの角質を形成する成分であるケラチン(タンパク質)が嚢胞内に多く含まれているために、白くて真珠の様な光沢が見られます。また、それらの細胞が嚢胞の中で分解されるためにコレステリンを豊富に含んでいます。嚢胞が自然に破けてしまう事があります。
大きくは、3つの原因による症状が認められます。
すでに症状が認めらてれたり、診断後の経過で増大傾向を認めた場合は手術の適応になります。また、リスクの低い手術が予測されるような場合にも治療を勧める事があります。
手術は、被膜内容物の摘出と被膜摘出になります。全摘出できずに被膜が残ると、再発のリスクがあります。手術には、術中部位や所見に応じての注意点や摘出判断が大切になります(ポイントとコツがあります)。特に、小脳橋角部や脳幹部付近に発生した病変では、大きな合併症が出現するリスクがあるので、術前によく担当医から話を聞きましょう。悪性変化(扁平上皮癌)の報告がありますが、かなり稀です。
(ⅰ)色
実際に、手術を行った術中写真です。脳と頭蓋骨の間に腫瘍(△)が認められます。全てが上の写真の様に、真珠の様に光沢のある物ばかりではありません。
(ⅱ)周囲脳組織との関係
この患者さんは、腫瘍(△)の中に血管(動脈;赤矢印)が走行しているのが分かります。さらに摘出していくと、もっと細い血管が走行しています。これらの血管損傷は、脳梗塞の原因となります。また、損傷下血管の処置をきちんと行わないと、術後に脳出血となる可能性もあります。腫瘍血管と正常血管の判断も必要です。
(ⅲ)病変の中に脳神経や血管が巻き込まれている
この患者さんでは、腫瘍(△)の中に血管だけではなく、脳神経が走行しています(⬆)。さらに腫瘍により圧迫を受けていました。この様な脳神経を摘出の際に損傷すると、顔面の麻痺や感覚障害、複視、嚥下障害などの脳神経障害を認めてしまう事になります。
類表皮嚢胞の手術経験の多い脳神経外科医と専門医:多くの手術経験があります。
類表皮嚢胞手術は、症状を引き起こす大きな類表皮腫瘍を除去するために必要です。嚢胞の内層は脳構造、脳神経、血管に非常に付着している可能性があるため、多くの患者では嚢胞を完全に除去できない場合があります。類表皮嚢胞の手術には豊富な経験と、あらゆる種類の脳および頭蓋底を含む腫瘍および嚢胞に対すして必要に応じて低侵襲の内視鏡を併用した外科的アプローチが必要です。 最先端の技術と実績のある手術経験を持つ機器を組み込むことで手術をより安全に侵襲性を抑える事でより効果的に手術を行います。
嚢胞を伴っているため、一般的には類皮嚢胞(Dermoid cyst)と呼びます。小児から成人まであらゆる年齢層に認められます。
嚢胞の壁は皮膚附属機(毛髪・皮脂腺・汗腺)で形成された非腫瘍性嚢胞性疾患(腫瘍類似性病変)です。
類表皮嚢胞・類表皮腫とは異なり、皮膚および皮膚附属器(毛嚢・汗腺・皮脂腺)よりなる非腫瘍性の嚢胞性病変です(嚢胞および腫瘍類似病変)。かなり稀な腫瘍で、子供に多いと報告されている疾患です。
原発性脳腫瘍としては、約0.2%と極めて稀。
類表皮嚢胞と比べると正中部に多く自然に破裂する事は少ないと報告されています(約10分の1)。破裂すると内容物が周囲に散らばることで、無菌性髄膜炎や血管攣縮による脳虚血症状が出現します。
後頭部の頭蓋骨に発生した場合、皮膚と脳や脊髄との間に皮膚洞(双方が管でつながっている状態)が認められる。
ほとんどが、耳の奥にある後頭蓋窩にできます。症状は、類表皮腫と似ていますが、嚢胞の破裂による痙攣発作(けいれんほっさ)や髄膜炎が比較的多いです。手術で見えにくい部位にできる事が多く、腫瘍境界部の癒着等も強い場合があるので、全摘出は必ずしも簡単ではありません。かなり稀ですが、悪性化されたとの報告があります。
▶ 嚢胞壁に髪の毛の一部が認められる
皮膚成分と腫瘍被膜(腫瘍の袋)に皮膚の付属器(脂腺、汗腺、毛包など)が認められます。中には、脂肪や伸びた毛髪が認められます。