下垂体腫瘍


下垂体腫瘍とは?


下垂体は、脳の正中下面(眉間あたり)に位置するホルモンの中枢です。下垂体は腺性下垂体(前葉、中間葉)と神経下垂体(後葉)に分けられています。腺性下垂体(前葉)に存在するホルモン分泌細胞には、成長期に欠かせない成長ホルモン、母乳を分泌させる乳腺刺激ホルモン(プロラクチン)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、性腺刺激ホルモン(LH,FSH)等があります。下垂体腫瘍のほとんどが、下垂体腺腫です。他に、頭蓋咽頭種やラトケ嚢胞があります。

いずれも生体を維持していく上で大切な働きをしています。腺性下垂体(前葉)の腺細胞がから発生する腫瘍が下垂体腫瘍です。

 


下垂体腺腫の分類


1.大きさ

  ほとんどが微小腺腫(Microadenoma)と呼ばれる最大直径が1㎝未満の

      大きさ腺腫です。この大きさ以上になると巨大腺腫(Macroadenoma)

     と呼ばれます。

2.ホルモンの産生の有無

  (腫瘍細胞がホルモンを分泌しているか、いないのか)

   ●成長ホルモンプロラクチンACTHTSH性腺刺激ホルモン

                          (LH,FSH)

3.組織学的分類

4.腫瘍の伸展(トルコ鞍外)の分類

 

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臨床では、腫瘍細胞のホルモン産生能の評価がとても大切になります。明らかなホルモン分泌をしない「非機能性腺腫」、ホルモンの過剰分泌をする「ホルモン産生腺腫」、の2つに分けて、大きさや症状で治療方針を決めていきます。

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非機能性腺腫


腫瘍細胞によるホルモンの過剰分泌がないため、ホルモン過剰による症状はありません。逆に腫瘍の影響によって、ホルモン機能低下症状を認める事があります(無月経、性欲低下、体毛の減少等)。下垂体は、視神経の近くにあるため、腫瘍が大きくなり視神経を圧迫すると視力・視野障害(両耳側半盲)が認められます。周囲の構造物を腫瘍が圧迫するようになると、頭痛が多く認められます。症状が認められれば、手術の適応になります。


機能性腺腫


(1). プロラクチン産生腫瘍

       女性では月経不順や無月経、さらに妊娠していないのに乳汁が出ることが

  あります。男性では、性欲低下やインポテンツになります。女性の場合、

  排卵障害の原因となりますので、不妊症の検査では必ず血液検査でこの

  プロラクチンが調べられます。

 

(2). 成長ホルモン産生腫瘍

       子供がこの腫瘍になると身長や手足が標準以上に伸びます。この症状は、

  「巨人症」と呼ばれます。成人の場合は手足の先端や額、下顎、鼻、唇、舌

  などが肥大し先端(末端)巨大症といわれます。靴や指輪のサイズが小さくな

  っ合わなくなったとか、数年前に比べて顔つきがかなり変わった

  (頭蓋骨・顔面骨の肥大)ことからこの病気が発見される事がよくあります。

  また、ホルモンの影響による糖尿病、高血圧などの原因となっている場合も

  あります。

 

(3). 副腎皮質刺激ホルモンを産生する腫瘍

      比較的まれな腫瘍です。症状は、体幹部の特徴的な肥満、糖尿病や高血圧、

  精神症状です。

 


下垂体腫瘍に必要な検査


下垂体をターゲットにした頭部MRIで画像診断をすることができます。また、下垂体機能評価のために、採血を行い、ホルモンの基礎値を調べます。この画像検査と血液検査によって、腫瘍の存在とホルモンを分泌している腫瘍細胞が存在する可能性を調べます。


下垂体腫瘍の治療


症状が認められば、手術(腫瘍摘出)の適応になります。ただし、プロラクチン産生腫瘍については薬物治療が第一選択になっています(巨大腫瘍や即効性を要する場合は手術になります)。

下垂体は、脳の正中下面(眉間あたり)に位置しており、鼻の奥から操作を行うのが最もリスクが低く、腫瘍も確認しやすいために、鼻の孔(鼻の穴)の粘膜を一部切開して手術を行います。現在は、従来の顕微鏡を使用する手術から狭い視野に有利な内視鏡を併用したり、内視鏡のみで行う方法にて行います。腫瘍が残った場合、下垂体腺腫のタイプによっては、放射線治療を追加することもあります。


再発について


下垂体腺腫の再発率や再発時期は、腫瘍の摘出率の他に腫瘍の種類によって様々です。報告されている論文から、非機能性腺腫では、15%前後(術後10年以内)と考えてよいでしょう。機能性腺腫でも、10年以内の再発を大きくまとめると同様の再発率と思われます。世界全ての病院がどこでも同じ手術はしません。また、同様に脳外科医の手術の方法やリスクに関する意識は、全く同じではありません。再発症例の中には、腫瘍の状態の問題ではなく、初回手術での技術的な問題で十分な腫瘍の摘出がされていない例もあります。術前の十分な説明と理解、術後の定期的な画像検査の経過観察は重要です。特に予測できる因子は、病理検査における分裂能力の評価(細胞増殖能マーカー)になります。