三叉神経痛を完全に治療する(完治)するには、手術が必要です。
Microvascular transposition: MVT (またはMicrovascular decompression: MVD)という方法です。手術により三叉神経を圧迫している血管を神経から離し、移動・固定する事により、神経の圧迫を解除して痛みの原因を取り除くという手術方法です。手術治療は原因を取り除く根本的な治療(永久的な治療)になるので、最も効果的な治療です。
神経根部を圧迫している動脈を確認します。
神経根部を圧迫している動脈を移動します。
神経根部を圧迫しいた動脈を完全に神経根部より移動させて固定します。
三叉神経(紫円)は、脳の比較的深い場所に位置しているために脳を牽引しながらこの部位を確認します。
脳と頭蓋骨内側には、これらを結ぶように(橋のように)走行している脳から心臓へ戻る静脈(錐体静脈:青矢印)という血管があります。一般的には、静脈は切っても(血行を遮断しても)問題が生じる事は稀ですが、この場所での静脈損傷は、脳腫脹による小脳出血を引き起こす可能性があるため、基本的には切らない方が良いと考えられています。脳や三叉神経周辺の構造物に過度の負担や損傷による機能障害を避けながら、三叉神経がこのような静脈に邪魔されないで確認・手術操作ができるように、脳を牽引する方向や程度が大切になります。経験や技術的十分ではない等を含めてリスクを軽減させる方針としての頭皮切開・開頭を大きくする事は大切ですが、患者さんへの負担(侵襲)も大きくなってしまいます。
脳や三叉神経周辺の構造物に過度の負担や損傷による機能障害を避けながら、三叉神経がこのような静脈に邪魔されないで確認できるように、脳を牽引する方向や程度が大切になります。経験や技術的十分ではない等を含めてリスクを軽減させる方針としての頭皮切開・開頭を大きくする事は大切ですが、患者さんへの負担(侵襲)も大きくなります。
また、三叉神経周囲には脳幹という大切な場所を栄養している細い血管(黄色矢印)がたくさんあります。この血管への扱いが十分ではないと圧迫血管を移動させる際に損傷やねじれなどによる血行障害が生じる可能性(術中に脳梗塞や脳出血が起きる可能性)があります。人の顔がそれぞれ違うように、頭蓋骨の形や神経が圧迫されている状態(圧迫している血管の太さや数、神経周囲の構造物との関係)が異なります。
よって、この部位の手術は、臨機応変に対応できる経験や熟練した技術が大切になります。皮膚切開、開頭、脳や神経への負担を必要最小限(低侵襲で患者さんの負担が少ない)というコンセプトにて鍵穴手術という手術法を行っています。
血管の固定にはテフロンという素材を使い血管を包む細いタオルのような物を作り、血管を巻いてテフロンを他の部分に付ける(フィブリンのりという特殊なのりを使ってのり付けしてきます)という方法を行っております。これは、私の師である福島孝徳先生(DUKE大学)が、この30年以上前より行っており、確立した非常に侵襲の少なく、有効かつ安全な手術方法です。
この際、血管を丁寧に剥がさずに血管と神経の間に物(クッション)を挟む方法(Interposition法)を行う施設や医師がおります。術後の経過で神経周囲が、癒着してしまい再発の原因となることがあります。また再手術が必要になった場合には、癒着が強く神経損傷による感覚障害のリスクが増してしまいます。私は、神経を圧迫している血管を移動させる重要性を昔から主張をしています(圧迫血管を移動させる Transposition法です)。
手術による痛みは、99%以上消失しています(他院での手術後の再発に対する手術症例は含まれておりません)。術後の痛みが、軽減したものの内服薬による痛みの管理を行いながら経過を見ている患者さんが、2人おられます。手術前の画像検査や痛みの性状や経過から、三叉神経根の血管圧迫ないしは捻転等の診断を正確に行う事が大切です。手術で治癒する症例への正確な判断が行できるためです。ほとんどの症例で手術直後から痛みが取れます。まれに 1〜2 週間かかることもあります。他施設で手術を行った患者さんが、症状改善が乏しいために相談に来られる事があります。中には、手術が不十分であったために再手術をして治療した経験も少なくありません。通常、入院期間は術後 1週間程度です。術後の経過を自宅で見たいと希望される場合は、患者さんの体調にもよりますが、術後3日程度で退院可能です。
血管を丁寧に剥がさずに血管と神経の間に物(クッション)を挟む方法 (Interposition法)を行う施設や医師がおります。術後の経過で神経周囲が癒着をしてしまい、再発の原因となることがあります。また再手術が必要になった場合には、癒着が強く神経損傷による感覚障害のリスクが増してしまいます。よって血管と神経の間に物(クッション)を挟まない事がとても重要です。我々の方法は、一貫して神経を圧迫している血管を移動させる重要性を主張しています(圧迫血管を移動させる Transposition法です)。血管の固定にはテフロンという素材を使い血管を包む細いタオルのような物を作り、血管を巻いてテフロンを他の部分に付けるフィブリンのりという特殊なのりを使って血管を神経から離して固定する、という方法を行っております。これは、私の師である 福島孝徳 先生(DUKE大学)が、この30年の手術経験の元で確立した非常に侵襲の少なく、有効かつ安全な手術方法です。
安全な手術を行うには、術者の眼と知識、経験のよる判断が不可欠です。特に顔面神経だけではなく周囲の構造物、他の脳神経(特に聴神経や迷走神経)や小血管に対するへの注意と繊細な手術操作が求められます。私自身は、微小血管減圧術の手術(病院施設の症例数ではなく、個人執刀症例数)は、500例以上を経験しており、良好な結果を得ています。大学病院の中には、年間の施設症例数が10例も満たない施設もありますので、脳外科医個人としての経験数としては、かなりの数になります(後日に詳細を追加します)。熟練した世界的脳外科医である 福島孝徳 先生より解剖も含め臨床の場で最初にご教授頂いた手術法です。手術は、技術だけではなくお教え頂く師匠の知識や経験を取り入れながら、自分の知識や経験、知恵とする事が手術を主とする脳外科医には、とても重要だと実感した手術の一つです。