三叉神経痛

(さんさしんけいつう)


1)  三叉神経痛とは?



三叉神経痛とは異なる痛みを伴う疾患

1) 帯状疱疹

三叉神経痛(特発性三叉神経痛)と区別しなくてはいけない病気に、帯状疱疹(ヘルペスウイルス感染症)の後遺症があります。帯状疱疹は皮膚に痛みを伴う発疹ができる病気です(発疹が出現せず、治癒する場合もあります)。帯状疱疹が顔面に発症した治療終了後にしばらくしてから顔の痛みを認める事があります。帯状疱疹の初期(発疹が出現する前の時期)にも、同様に三叉神経痛を認める事があります。帯状疱疹後の三叉神経痛以外は、良く話を聞くと痛みの性質が三叉神経痛とは違っています。


2) 舌咽神経痛

舌咽神経痛は三叉神経痛と同様の痛みがのどの奥に起こります。特に物を飲み込んだときに痛みます。耳の奥、首の前方(のど付近)に痛みが走るように感じます。三叉神経痛に比べ、まれですが、三叉神経痛と区別する必要があります。→ 舌咽神経痛の詳細についてはコチラ


2)三叉神経痛の原因

3)三叉神経痛の診断

4)三叉神経痛の治療

三叉神経痛の診断後は、基本的には内服薬にて痛みの管理を行います。痛みに対する不安が強い場合、内服薬による副作用の出現、内服薬の量が適量を超えてしまう場合、に手術を行う事が一般的です。

1)最も効果的な治療は外科手術(微小血管減圧術)

 

Microvascular transposition: MVT (またはMicrovascular decompression: MVD)という方法です。手術により三叉神経を圧迫している血管を神経から離し、移動・固定する事により、神経の圧迫を解除して痛みの原因を取り除くという手術方法です。手術治療は原因を取り除く根本的な治療(永久的な治療)になるので、最も効果的な治療です。これは片側性顔面痙攣や舌咽神経痛と同じく、神経を圧迫している血管と移動固定する治療法です。私は「鍵穴手術」を行っています。皮膚切開が小さく髪の毛を全く切りませんので治療後は、周囲の人が気づく事はありません。痛みも通常の切開によるものより軽度です。

皮膚の切開は、耳の後ろ(髪の毛のある部位)に小さな切開のみで行います(左;赤点線部分)。無剃毛手術のため(髪の毛は、切らずに剃る事もしません)手術後傷が目立つ事はありません。頭蓋骨に直径2cm程度の穴を空けて、三叉神経が脳へ入り込むまでの走行を頭蓋骨内側と脳の間の隙間から確認します。そして、三叉神経を圧迫している血管を丁寧に剥がし血管が神経に当たらないように場所を移動させて、固定します。手術時間は1時間30分程度です。

 

→ 三叉神経痛の手術の詳しい事はコチラへ

安全な手術を行うには、術者の眼と知識、経験のよる判断が不可欠です。特に顔面神経だけではなく周囲の構造物、他の脳神経(特に聴神経や迷走神経)や小血管に対するへの注意と繊細な手術操作が求められます。私自身は、微小血管減圧術の手術(病院施設の症例数ではなく、個人執刀症例数)は、500例以上を経験しており、良好な結果を得ています。大学病院の中には、年間の施設症例数が10例も満たない施設もありますので、脳外科医個人としての経験数としては、かなりの数になります(後日に詳細を追加します)熟練した世界的脳外科医である福島孝徳先生より解剖も含め臨床の場で最初にご教授頂いた手術法です。手術は、技術だけではなくお教え頂く師匠の知識や経験を取り入れながら、自分の知識や経験、知恵とする事が手術を主とする脳外科医には、とても重要だと実感した手術の一つです。

2)内薬による治療方法

 

カルバマゼピン(商品名;テグレトール®/Tegretol)という主にてんかんの治療薬での内服で効果があります。痛みが完全に消失できなくでも緩和させる事が可能です(痛みが軽度~中等度の場合)。また、プレガバリン(商品名;リリカ/Lyrica)という神経が原因となる痛みに対して効果をもたらす治療薬もあります。帯状疱疹などの神経障害性疼痛に用いられましたが、三叉神経痛においても使用認可されました。薬の副作用(肝機能障害・めまい・ふらつき、重症になると全身の臓器の機能が悪くなるStevens-Johnson 症候群があります)、痛みの増悪に伴う薬の増量に限界が生じた場合は、内服治療の継続はできません。

3)放射線治療

4)神経ブロック

 

5)三叉神経痛の手術による治療効果


手術による痛みは、99%以上消失しています(他院での手術後の再発に対する手術症例は含まれておりません)。術後の痛みが、軽減したものの内服薬による痛みの管理を行いながら経過を見ている患者さんが、2人おられます。手術前の画像検査や痛みの性状や経過から、三叉神経根の血管圧迫ないしは捻転等の診断を正確に行う事が大切です。手術で治癒する症例への正確な判断が行できるためです。ほとんどの症例で手術直後から痛みが取れます。まれに 1週間かかることもあります。他施設で手術を行った患者さんが、症状改善が乏しいために相談に来られる事があります。中には、手術が不十分であったために再手術をして治療した経験も少なくありません。通常、入院期間は術後 1週間程度です。術後の経過を自宅で見たいと希望される場合は、患者さんの体調にもよりますが、術後3日程度で退院可能です。