神経血管圧迫症候群(三叉神経痛や片側性顔面痙攣、舌咽神経痛)の手術に伴う合併症について説明をします。
三叉神経痛、顔面痙攣、舌咽神経痛などの神経圧迫症候群の手術は、合併症なく行う手術であり問題が生じる事はかなり稀です。
三叉神経痛の手術時の画像です。黒矢印の静脈は、三叉神経や聴神経の前に存在し、これを上手に剥離をしていかないと、奥の三叉神経が見れません。この静脈を損傷した場合、静脈還流異常を来してしましい重篤な小脳出血を引き起こす可能性があります。海外の論文では、損傷もしくは切離によって約5%前後の出血リスクとされています。しかし、この静脈をきれいに脳より剥離をして処置をせずに手術を行い事がとても大切だと思っています。また、三叉神経近傍を走行している静寂な聴神経に負担を与えてしまうと、術後に聴力障害が出現することもあります。重要な構造物が三叉神経の周囲には存在するため、経験や熟練した技術が必要となります。
これらの症状は、手術による一時的なものや軽症でリハビリテーション治療で回復するものも含まれます。再手術や再発の手術、血管と神経との関係が複雑であれば一時的に症状が出現する可能性があります。
神経圧迫症候群は、それぞれ役割を持った脳神経が血管(動脈)の圧迫を受ける刺激により症状が出現します。神経と血管を離して、血管を固定する手術なので、①−⑤の程度にもよりますが、これらの強い所見があったり、①−⑤が多く含まれている状態であればある程、術中のリスクは高くなります。術前のMRI検査でこれらの状態を十分に予想する事は難しいため、術中の所見を見て初めてわかるリスクも多いと言えます。